 |
 |
先般9月15日、敬老の日に吾が町で“百歳の顔”という一部の方の写真集を見せてもらいました。
百年の長い人生をそれぞれに生き抜いてきた人達の顔は、人生の積み重ねと言おうか、人生の造詣とも言おうか、何とも言えない奥深い、暖かい思いやりを感ずる、人間味のある顔でした。そして、その中に凛とした厳しさみたいなものも見受けることができたのです。
それは、「それぞれの人生の中で信念を持って生きて来たのだなぁ」と深く感慨を持ち、あらためて人生の年輪の深さ、百歳に敬意を表した次第であります。私など、とても百歳の顔には程遠い未熟さを感じます。
幸い健康に恵まれ、曲がりなりにも酒造り一筋に生きて参りました私は、戦後、復帰し荒廃した国土の中で貧しい農家の長男として学業の志望も空しく、職業の選択も出来ないままに、村の先輩たちに連れられて酒男として出稼ぎの道に入り、もう50年になりました。
酒造りの仕事は厳しく、寒中は寒く冷たく、朝早くから夜には不寝番まで、時間も長く、しかも上下の職階制が厳しかった。今にして思えば、どこの酒蔵も酒造りは伝統の中に包まれており、何世紀も守り続けられた伝統の輝きに満ちあふれているとの言葉どうりでありました。
今もなお、常々感ずることではありますが、酒は「生きもの」であると言うことです。
まだまだ解明出来ない未知の世界が沢山あります。それだけに私は、挑戦すると言う大きな夢やロマンを感じます。
日本酒は古くから日本人の生活と深くかかわりを持つものであり、神事に始まり年中行事そして人間の出会いと別れ、また、その友情を深め合い、日常生活においては生活に潤いを持たせ、安らぎと勇気を与えられる等々、生活を豊かにしてくれます。
喜びにつけ悲しみにつけ酒は人生のいろどりを、ある意味に於いては、社会の潤滑油の働きをし、文化の根源ともいわれているのではないでしょうか
|
 |
<< 目次 次へ >>
|
|
|