北陸富山を代表する吟醸蔵「桝田酒造店」は、かつて北前船（地元ではバイ船と呼ぶ）の交易で栄えた東岩瀬町、廻船問屋の町家や料亭の佇まいに往時の繁栄を漂わせる界隈の中ほどに蔵を構えています。

満寿泉の創業は、初代の亀次郎が岩瀬の五大家と言われていた廻船問屋から妻を迎え、その北前船に乗り向かった先、開拓の地・北海道旭川にて酒造業を興した事から始まります。旭川酒造史に「都松」の商標で最初に．．．もっと見る

北陸富山を代表する吟醸蔵「桝田酒造店」は、かつて北前船（地元ではバイ船と呼ぶ）の交易で栄えた東岩瀬町、廻船問屋の町家や料亭の佇まいに往時の繁栄を漂わせる界隈の中ほどに蔵を構えています。 満寿泉の創業は、初代の亀次郎が岩瀬の五大家と言われていた廻船問屋から妻を迎え、その北前船に乗り向かった先、開拓の地・北海道旭川にて酒造業を興した事から始まります。旭川酒造史に「都松」の商標で最初に出てくるのは明治26年（1893年）、年間1500石と明治年間としてはとても大きな規模まで成長するが、明治36年の寒波の後、故地である富山県へ戻り、当時は「岩泉」という銘柄で酒造りを始めます。 そして、昭和初期になると港の芸者衆にも飲んでもらう為、苗字の桝田にちなんで「満寿泉」と命名し、今で言う別ブランド展開を始め、それが主力ブランドとなって全国にその名を轟かせます。 満寿泉は、昭和40年代半ばの吟醸酒がまだ一般市場では認められていなかった時代、蔵の存続をかけてハイリスクを承知で敢えて吟醸造りの道を歩み始めます。現在は全生産量の2000石のうち4割が吟醸酒を占め、「吟醸の満寿泉」と称されるようになった桝田酒造店ですが、この蔵を全国の名だたる吟醸蔵として育て上げたのが、現当主「枡田敬次郎氏」と能登杜氏四天王の一人「三盃幸一氏」です。 18歳でこの道に入り、父も祖父も親類も杜氏というエリート杜氏の家系に生まれた三盃杜氏は、父の後を受けて満寿泉の杜氏になり、その手腕を大いに発揮した能登杜氏の代表的な存在です。三盃杜氏の醸しだす酒は、麹を締めたしっかりした造りで、吟醸香と旨味が溶けあう安定した綺麗な味わいが生まれます。日本酒ファンならずとも美味しいと思えるその酒は、「吟醸の満寿泉」の名に恥じない吟醸の王道をゆく日本酒です。 食文化と密接な関係を持つ地酒は、地元の新鮮な素材を活かす事が求められます。「美味しいものを食べている人しか美味しいお酒は造れない」と、海の幸、山の幸に恵まれた土地柄にあって、美味求眞をもう一つのモットーとする満寿泉は、大自然が育む天然の食材と調和し、さらに引き立てる酒を造り続けています。 立山連峰からの膨大な雪解け水が注がれる富山湾には、甘海老、寒ブリ、バイ貝、ホタルイカ、ズワイガ二など様々な魚介類が育ち、深い雪の下から芽吹く山の精気を蓄えた山菜の数々はまさに精神的な薬膳です。自然の味が凝縮した素材には淡麗辛口では役不足、綺麗で味のしっかりした酒質はこうして磨かれています。